ベルデセルバ戦記でブログ

プレイステーションソフト「ベルデセルバ戦記~翼の勲章~」 にこだわるブログです。(略称【ベル戦ブログ】)

〜飛来編〜第一章 〜天から落ちてきた男〜 #4

2.

 1階まで下りるとロビーでカフィがミサキを待ち構えていた。
「どうだった?」
「まいったよ。軍に入れだとさ。」
「ほんとに?ノイパスク人以外の人間を軍に入れるなんて今までになかったことよ。どういうつもりなのかしら?」
 カフィは心底驚いているようだった。
「さあな。」
「あなたは?軍に入るの?」
「どうするかなあ・・・。」
「迷ってるのね。無理もないか。まだこの星のことをろくに知らないんですものね。」
 ベルデセルバ星の事もそうだが軍隊の事もよく分からない。ミサキが飛行訓練を受けていた今日までの間にも何度か戦闘があったようだが、すべてナデス島から離れた場所で戦っていたので、ミサキには飛空船での戦闘がどういうものかもよく分かっていなかった。
「東の民家にいるおじいさんにいろいろ聞いてみるといいわ。ここのこといろいろ親切に教えてくれるはずよ。」
「わかった。」

 チュ−ブのすきまから暮れかけた空をのぞきながら、ミサキはカフィに教えられた住所を尋ねた。
「なんじゃ?」
 小さな家から出てきた老人は繁華街で見た覚えがあった。今日もその時と同じエンジと白の横縞の服を着て、三色の色使いの日傘をなんと家の中でもさして歩いていた。ミサキは少々不安になったが、カフィにいわれて来た旨をつげた。
「カフィに聞いてきた?いいじゃろう、異星人さんよ入りなされ。」
 と、家に招き入れてくれた。
「何かわしに聞きたいことがあるのか?」
 早速ミサキは挨拶もそこそこに質問を始めた。
「じゃあ、まずベルデセルバの地理を教えてくれ。」
 すると老人は本棚に向かった。狭い家の中には図鑑やら学術書とおぼしき分厚い本やらが詰まった本棚があちこちにある。老人は棚から大判の図鑑を取り出した。
 老人は机の上に図鑑を乗せ、見開きの地図のページを広げた。
「これがベルデセルバの地図じゃ。この大陸図は北半球だけしか描かれてないんじゃが、南半分にはほとんど人が住んどらんで、そっちは考えんでもよろしい。」
 ミサキが黙って聞いていると、老人は更に半透明の紙を持ってきて地図に重ね、鉛筆で線を引いてゆく。
「飛空船でも越えられぬ高い山脈が、この星ベルデセルバを北と南に分けておる。北がムノギイ連邦共和国。普通は「ム連邦」と呼ぶ。南にはグラシアルギダン王国・・・通称「ギダン国」があり、ギダンとム連邦の間には、ム連邦所属の「クナ共和国」がある。」
 大陸を分けている山脈は地図の中央部で切れていて、そこに南北に長い大きな湖(地中海?)が横たわっていて、湖の北の沿岸はすべてム連邦、南の西岸に小さくクナ共和国、東岸から惑星をぐるりと取り囲んでクナ共和国の西までずっとギダン国になっていた。そして老人は、クナ共和国の北の、山で囲まれた狭い地域を鉛筆で囲んだ。囲みはわざと南に切れ目を残してある。
「そして星のほぼ中央にはベルデセルバのへそ、「オルダナスピ国」がある。」
 さらに、オルダナスピ国の北の、ム連邦とギダン国の間の地域を指し示して、
「星の北西部にある「ノイパスク共和国」は、飛空船でも越えられない山で囲まれている。」
 惑星は丸いのだから星の西も東も無いもんだとミサキは思ったが、オルダナズピを「へそ」と呼んだことから、どうやらオルダナスピを中心にして西か東かと表すのがベルデセルバのやり方らしいと解釈した。
「俺達はどの辺にいるんだ?」
 ミサキはノイパスク領内の大きな湖を指して言った。この島は海(または湖)の上にあるからだ。
 老人の鉛筆が指したのは、しかし、地図の南側だった。ギダン国の中央部に広がる巨大な湖の東岸近くだった。
「わしらがいるこの浮遊島はノイパスクの領土ではあるが、ノイパスク本国を離れ、ギダン国領内にいるわけじゃ。」
 老人の鉛筆は本国とオルダナズピ国との国境付近から伸び、ギダン国の領土を通って海上のナデス島に達した。
「なんでこの島だけ本国からこんなに離れてるんだ?」
「ナデス島は半重力エンジンが故障しておってな、流されるままギダン領内に入ってしまっとるんじゃ。」
「なんてこった・・・。それでしょっちゅう軍隊が出撃してるんだな・・・。」