ベルデセルバ戦記でブログ

プレイステーションソフト「ベルデセルバ戦記~翼の勲章~」 にこだわるブログです。(略称【ベル戦ブログ】)

海皇紀と星1



今日、海皇紀アルティメット・ガイド(川原正敏/講談社)を買いました。

海皇紀 アルティメット・ガイド (KCデラックス)

海皇紀 アルティメット・ガイド (KCデラックス)

全然アルティメット(究極)じゃないです。そこそこの分析と作者インタビュー・巻末漫画などがありますが脱落している情報も多い。掘り下げも浅い。「磯野家の謎」がA級謎本だとすればせいぜいB級謎本といったところでしょう。
海皇紀は普通にコミックスも買ってますよ。)

 さて、海皇紀の海の一族の人名・船名が現在の天文学の用語を使っているのは知る人ぞ知るトリビアですが、アルティメットガイドにも載ってないしgoogleで100件くらい斜め読みしてみたところこれを解説したサイトが存在しない(2chでは触れられているが)ので私が解説してしまおうと思います。こういうのは詳しい人がやるよりは早い者勝ちですから。
 以下、アルティメットガイドに乗っていた話とダブるものもありますが、あの本もデータソースにしているのだからそれは当然です。

北極星


 第一巻の冒頭で
「古にステラ・マリス
 あるいはナビガトリアと呼ばれし星
 すでに北辰になく
 ケフェウスの第三星
 その名を継ぐ
 すなわち海の星 航海を導くもの」


 とあるが、これはアルティメットガイドにも解説がある通り、現在我々が北極星と呼んでいる星が天球の極(回転軸上の点)ではなくなり、ケフェウス座の第三星(ガンマー星)が北極星になった(時代である)との宣言な訳である。
 そんなことがあるのか?宇宙の恒星が動いたのか?地軸が大移動したのか?と思われるかもしれないが、これは地軸の歳差運動と呼ばれるものの結果なのである。
 よってどうやら現在から2000年後の未来であると考えられるわけである。


 歳差運動についてはこちらをご覧下さい。そしてリンク先に書かれている4000年前(より正確には4800年前)の北極星に注目して欲しい。「りゅう座α星(トゥバン)の近くに位置していた」とある。
 そう!トゥバン・サノオの名の語源はこれであると思われる。なおトゥバンとは「竜」という意味である。大陸一の兵法者にはいかにもふさわしい名前ではないか!(サノオは「スサノオ」が由来ではないかと思うが、はっきりしない。)
 となるとファン・ガンマ・ビゼンの名も北極星がらみと思ってよい。アルティメットガイドに作者川原正敏氏のコメントとして「ビゼンは・・・ケフェウス座を「備前の箕」ともいう」とある。
 ちなみに
いて座の下半部、つまり南斗六星の柄を除いた四角形が農具の「箕(み)」に似ていて長崎箕
みずがめ座の四角形を東京箕
 次の二つは香川県の地方星座だが
へびつかい座の四角形を讃岐の箕
ケフェウスの五角形を備前の箕
 と言うそうである(野尻抱影著:日本の星より)


 つまりガンマ・ビゼンとはケフェウスの第三星を意味する(第一・第二は一般にアルファ・ベーターと呼ぶ)のでこれも北極星を意味する。ファンの母マリシーユ・ビゼンがこれを意識していたかどうかは不明だがファン自身は意識している可能性は高い。なぜなら八番艦の艦旗はケフェウスの五星と鷹の羽であるからだ(とアルティメットガイドも指摘している。また、五角形の一番とんがった角がガンマ星で旗ではそこのみ黒でなく白い星に描かれている)。なお、マリシーユが「ステラ・マリス」のマリス(海)から取られた名かどうかはなお考察を要する(ほぼ間違いないと思うが)。


 海皇紀の第一回ではファンとトゥバンが出会っている。新旧の北極星が顔を合わせたのである!
 こう来ると他の主要人物も重要な星である可能性が高い。・・・と思ったのだがなかなか簡単にはいかないようである。


 マイア・スアル・オンタネラは昴(スバル:プレアデス星団おうし座)が由来。マイアはギリシャ神話のプレアデス7姉妹の1人。プレアデスの七星の内の一つ(3.86等星)の名でもある。オンタネラ王家の名の由来は国の名オンタナからであろう。そしてオンタナは、わし座のアルタイル【彦星】の日本語別名らしい。ただしネットで見つけた根拠サイトは一つだけ。その意味だが、琴座のベガがメンタナであることから、オンタナは男七夕星という意味だろう。しかし川原氏はどこからこんなマイナーネームを持ってくるのだろうか?野尻氏の「日本の星」にも載ってないぞこれ。(この星名を発掘してきたのも野尻氏だが。)なお、スバルは春を呼ぶ冬の星、アルタイルは七夕の夏の星である。
 カザル・シェイ・ロンの由来は不明である。どなたか情報下さい。
 アル・レオニス・ウル・グルラのレオニスは「しし座(leo)の」という意味のラテン語。アルは恐らくα(アルファ)星(通名レグルス)のことを指すのであろう。(アラビア語のtheに当たる定冠詞alの可能性もあるがレオニスはラテン語であるのでなじまない。)ウル・グルラは古代バビロニア語の初期の頃のしし座で、大きな犬の姿に見られウル・グルラ(おおいぬ)といわれていたそうである。だからやはりレオニスは「しし座の」で間違いない。


海の一族


 海の一族でも上位に位置する人々の名前の由来は分かりやすい。


 レグルス・マリキ・セイリオス(故海王)のレグルスはのしし座α星レグルス(小さな王)。マリキはこれもレグルスの別名でアル・マリキ(王の星)から。名前に二つも王を持つとは贅沢なお方です。
 ソル・カプラ・セイリオス(レグルスの三男)のソルは太陽。カプラはぎょしゃ座のα星カペラ(礼拝堂)の可能性が高い。
  マルキュリ・オ・スクラのマルキュリは水星。
 カノープ・カフ・セイリオス(レグルスの長男)のカフはカシオペア座のβ星カフ。カフは赤経0度に位置するので、恒星時測定の大まかな目安となる。カノープはりゅうこつ座のα星カノープス(約1万2千年後には南極星になるそうだが海皇紀では関係ないだろう)
 フェルカド・ルーナ・セイリオス(レグルスの次男)のフェルカドはこぐま座のγ星(3等星)。ルーナは月。
  エギア・アマルガスのエギアはエーゲ海に浮かぶ島の名。アマルガスはギリシャ語Amorgos=アモルゴスでこれもエーゲ海の島の名。(アマルガス号事件は2001年、一方エギアの初出は2000年なので関係ないものと思われる。)

 セイリオス(Seirios:ギリシャ語で「焼き焦がすもの」「光り輝くもの」を意味する)は日本ではシリウス大いぬ座アルファ星:全天でもっとも明るい星)の名の方が有名であろう。
 なお、コル・セイリオスは星の名にはない。(ちなみにコル・レオニス:「獅子の心臓」はレグルスを意味する。)

 スクラ三姉妹(マルキュリの姉妹でライエ(RayeならRachelの愛称でケルト語の「優美、恵み深い」)、エールラ(ELLAならばチュートン語で「実り多い」、ELEORAならばヘブライ語で「神は私の光」)、グリスロウ(不詳。よく人名に現れるグリスはGrise「灰色」。ロウはLauかRauのいずれかがメジャー。意味は不明。)の三人。母はソルの乳母ノルハナ)のスクラは恐らくギリシャ神話の海の怪物スキュラが由来と思われる。スキュラは上半身が美女で下半身に六つの犬の頭を生やし、十二本の足を持っている化け物。岩礁を象徴しているといわれる。六つの頭を伸ばし、一度に六人の船乗りを襲って喰らうという。きれいな顔してその正体はエゲツナイあの姉妹にはぴったりのネーミングである。