ベルデセルバ戦記でブログ

プレイステーションソフト「ベルデセルバ戦記~翼の勲章~」 にこだわるブログです。(略称【ベル戦ブログ】)

〜飛来編〜第一章 〜天から落ちてきた男〜 #6


「お疲れさま。」
 広報部の事務仕事を早めに切り上げたカフィは、官舎には戻らず直接繁華街へ出かけることにした。軍服の上にこれも支給品のマントをつけただけの姿だが、軍人の人口が多いナデス島では軍服姿で飲みに行くほうがかえって普通である。忙しい女性にとっては、わざわざおしゃれをする労力が無くていいのは助かることだった。それでもカフィは軽く化粧を直し、マントの留め金も宝石のはめ込まれた物に変えていた。
 司令部を出ようとした所で、軍に数少ない女性飛空士の一人に行き会った。カフィを見るとパタパタとかけよってくる。
「オユ=キクル。」
「カフィ中佐!こんばんわ!きゃー!どうしたんですか?オシャレして!ひょっとしてデートですか?」
「フフ、飲みにいくだけよ。」
 まだ21歳の彼女は、カフィとは職場も違うし年も離れている。しかし何をしてあげるわけでもないのにカフィを慕ってくる。カフィの方もこの若い娘には好感をいだいていた。
 ひとなつこい性格で、どこにでもすぐ溶け込んでしまうタイプだった。カフィに恋人はいないと知っていながらデートか?などと質問しても、それを嫌味とは感じさせない、得といえば得な性格だった。
 彼女を見るたびカフィは、こんな子まで戦わなければならない戦争など早く終わらせなければ、と思うのだ。
「ああ〜ん、残念!一緒に行きたかったぁ!あたしこれから訓練飛行なんですよ!もー、最悪です。夜戦訓練なんて必要ないですよ!敵が夜来た事なんて無いじゃないですか。」
「あら、夜襲の可能性は十分あるわ。たまたま今まで無かっただけよ。」
「えー!そうなんですか!?」
 カフィはオユ=キクルの反応を確かめるいい機会だと思って話題を変えた。
「ねえ、オユ=キクル。あの異星人さんの事なんだけど。」
「?。あのミサキさんがどうしたんですか?」
「彼を基地内に住まわせておいて大丈夫だと思う?」
「え?何か問題があるんですか!?ミサキさんに。」
「ううん。私が見た限り、彼は誠実な人間だと思うわ。」
「誠実っていうより、単純なだけのような感じがしますけど。」
「うふふ、聞いたら怒るわよ。」
「わぁ、あの声で怒鳴られるのはやだぁ!最初の二三日、基地中に聞こえてましたからね。」
「でも、悪い人じゃないのよ。」
「んー、それはなんとなく分かります。歓迎パーティーで見たときも人付き合いはよさそうな感じでしたよね。」
「たとえば、一緒に仕事する事になったらどうする?」
「仕事って、・・・ミサキさん飛空兵になるんですか!?」
「軍人じゃなくてもよ。オユは異星人と一緒には仕事出来ないかしら?」
「人によりますよ〜。異星人といっても人間には違いないんですし。まあ、あの人なら大丈夫かな?わりと美形だし。」
「そう。」
 この子なら平気だろう。それにミサキなら部下の女性に手を出す事も無いと思われた。実際、女性兵士をどこに配属するかはカフィにとっていつも悩みのタネだった。兵士が極限状態に陥りやすい軍隊において、部隊内の女性の安全は指揮官の良識に左右されるからだ。それは戦闘能力とは別の話なので判断が難しい。
「あら、オユ、引き止めてごめんなさい。訓練に行かなくて大丈夫?」
「わ!大変!じゃ、カフィ中佐、また今度ご一緒させて下さい!失礼しますっ!」
 素早く敬礼するとオユ=キクルは空港に向かって元気よく駆け出した。