ベルデセルバ戦記でブログ

プレイステーションソフト「ベルデセルバ戦記~翼の勲章~」 にこだわるブログです。(略称【ベル戦ブログ】)

〜飛来編〜第一章 〜天から落ちてきた男〜 #1

1.

 ミサキの操縦する飛空船は、海面から数百メートル上空、上昇限界に近い高さを飛んでいた。元いた空港に帰還するためだ。
 しばらくして海上の空中に巨大なものが見えてきた。遠くからは黒いシミにしか見えなかったものが、近くに寄るにしたがって大きな岩の塊である事が分かってくる。空中に浮かぶ漏斗型の岩の上には西に3つの岩山、北に大きな湖、東には森すらあり、その間をぬって湖から南に流れ出す小川の水は島の端で滝となり、はるか眼下の海に霧状になって注いでいた。
 この空中に浮かぶ島、雲の上を浮遊するナデス島こそがミサキが宇宙から落下した所であり、現在ミサキが住んでいる場所なのだった。
 ミサキは島を一回りすると島の南にある空港に向かった。

 ナデス島の空港に飛空船を停泊させると、ミサキは飛空船の訓練教官に言った。
「まだ明るいから、燃料を入れたらもう一度飛ぼうぜ。」
「ダメだ。許可が下りていない。」
「ちぇっ、許可がないと空も自由に飛べないのか。」
 仕方なく練習船を下りたミサキは市街地に向かった。
 ミサキが住んでいる都市はクリーム色の素材で統一されており、柱や壁など随所に様々な装飾が施されていて、古いながらもそこかしこから伝統と繁栄の息吹が感じられた。安物の近代都市や雑然とした商業都市にはないものだ。空港の管制塔のロビー入口の天井などは巨大で精巧な透かし彫りになっており、木漏れ日のような繊細な光を通路に降らせていた。
 とは言うものの、さらに高度な電子文明に慣れたミサキには、文明の利器といっても電気による照明と自動ドアくらいしかないような都市はどうにも古臭く感じられた。
 ともかく、ひとっ風呂浴びようとミサキは家路を急いだ。
 高度が高く、周りに地面も水面もないこの島には一年を通して強風が吹きつけるため、全ての建物の間には防風のためのチューブ状の渡り廊下が張り巡らされている。チューブは地面にではなく1・2階の高さにあるのだが強風に壊される事もない様子から、ノイパスクの技術力がまだかなりの水準にあることがうかがわれる。
「何?メンテ中だと?」
 市街地へと続くチューブの自動ドアは動かなかった。
 空港には市街地へ通じる道以外は軍関係の建物しかなく、軍人ではないミサキはどこにも入れないので、急に手持ち無沙汰になった。時間をつぶすため空港に戻り、船や空でも眺める事にした。
 空港にはたくさんの飛空船が係留されていて、時折吹く強風にギシギシと船体を揺らしていた。宙に浮いている船の間から、細かく輝く海面がミサキの足元の遥か下に見え、吸い込まれるような気がした。ミサキはいま自分は天空の島にいるのだということを再確認したのだった。